「お客様からよく『いいですね、また来ます』と言われるんだけど、実際に再来店してくれる人は少ないんです…」
福島で中小企業を営む木村さんは、こんな悩みを抱えていました。
SNSの「いいね数」は順調に増えてきて、店舗やオフィスに来た人からは「素敵ですね」と褒められることも多いのに、なぜか売上や契約には結びつかない。
「興味を持ってもらえているのは感じるんですが、そこから一歩踏み出してもらうのが難しくて…」
この悩み、身に覚えありませんか?
「いいね」はもらえるけど売上につながらない。
「また来ます」と言われるけど再来店しない。
「検討します」で終わってしまう商談…。
これ、特に地方企業あるあるなんですよね。
実はこれ、「興味はあるけど、今すぐ行動するわけではない人」へのアプローチが上手くいっていない典型的な例。
「今すぐ買いたい!」というお客さまにアプローチする方法は、前回のLv.3で詳しく解説しました。検索対策を整えて「福島 ラーメン」とか「仙台 美容室」という検索にヒットする。これが基本中の基本でしたね。

でも実は、それだけじゃビジネスは成り立ちません。というのも…
今回は市場の大半を占める「潜在欲求層」、つまり「興味はあるけど、今すぐ行動するわけではない」という層にフォーカスします。
少し復習しておくと、市場は主に3つの層に分かれています。すぐに行動する「顕在欲求層」、興味はあるけどまだ行動しない「潜在欲求層」、そして現時点では興味がない「認知なし層」です。この3つの層には、それぞれ異なるアプローチが必要なのでした。


意外と知られていないんですが、長期的に成功している事業者に共通点するのは、この「潜在欲求層」をうまく引き込むスキルがズバ抜けて高いこと。
一度きりの販売じゃなくて、継続的な関係をつくれるかどうかが、ビジネスの持続的な成長を左右するんです。
そして、地方の中小企業こそ、この潜在層へのアプローチを変えることで大きなチャンスがあります。なぜか?
理由はシンプルです。地域密着だからこそできる「顔の見える関係づくり」が、潜在層の背中を押す最強の武器になるから。
今日は、限られた予算と時間の中でも効果バツグンの潜在層アプローチ法をお伝えします。大手企業のマネじゃない、地方企業だからこそできる「心をつかむ」情報発信について、一緒に学んでいきましょう。
・なぜお客様は「いいね」はするけど買わないのか?
・潜在層の心を動かす3ステップアプローチ
・地方企業だからこそできる、大手に負けない情報発信法
・SNSのフォロワーはいるのに売上につながらない方
・「また来ます」と言われるけど再来店が少ないとお悩みの方
・小さな予算でもできる情報発信を探している方
「興味はある」けど「買わない」お客様の心理

冒頭の木村さんのような状況、あなたの会社やお店でも経験したことがありませんか?
「いいですね」「素敵ですね」と言ってもらえるのに、なかなか購入や契約に結びつかない…。
これは決して珍しいことではありません。というのも、市場全体を見渡すと、実は「今すぐ買いたい」という顕在層はごく一部。ほとんどは「興味はあるけど、今すぐ行動するわけではない」という潜在層なんです。
なぜ彼らはすぐに行動に移さないのでしょうか? 潜在層が抱える心理的なハードルには、主に3つあります。
1. 情報不足:「もっと詳しく知りたい」「他の選択肢と比較したい」
2. 不安:「本当に自分に合っているのか」「失敗したらどうしよう」
3. 優先順位:「興味はあるけど、今はそれどころではない」
これらのハードルを一つずつ取り除いていくことが、潜在層アプローチの本質です。
あらゆる業種において、潜在層のお客様はこんな人たちかもしれません。
✔ SNSで投稿を「いいね」しているけど、まだ実際の行動(来店・問い合わせ・申し込み)に至っていない
✔ 一度接点があって「良いですね」と言ったものの、そのとき購入や契約には至らなかった
✔ 知人からの紹介で興味を持っているが、「いつか利用してみよう」と思うだけで具体的な予定はない
そして、彼らがすぐに行動しない理由はそれぞれ異なります。「商品の品質や価格について詳しく知りたい」「似たような商品を扱う他店と比較したい」「今月は予算的に厳しい」など、様々な理由があるんです。
潜在層アプローチの基本:3ステップで心をつかむ

では、そんな潜在層の心をつかむには、どうすればいいのでしょうか?
基本は次の3ステップです。
ステップ1. 興味を持つ人を集める
↓
ステップ2. 有益な情報提供で教育する
↓
ステップ3. 適切なタイミングで案内する
それぞれについて、地方の小売店を例に具体的に見ていきましょう。
ステップ1:興味を持つ人を集める

まず最初に大切なのは「あなたの商品やサービスに興味を持ってくれそうな人」との接点を作ること。
SNSは、この「興味がある人を見つける」のに最適なツール。なぜなら、SNSは人々の関心や価値観、ライフスタイルが色濃く映し出される場だからです。
例えばInstagramのミッションは「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」ことです。このミッションに基づいて、ユーザーが興味を持ち、積極的に利用したくなる投稿が優先的に表示されるようアルゴリズムが設計されています。インスタグラムをはじめ、各SNSはユーザーの興味関心に合わせたコンテンツを表示するよう最適化されているのです。つまり、SNSは「人の興味を可視化するプラットフォーム」とも言えるでしょう。
具体的に見ていくとこんなところから、ユーザーの興味関心が見えてきます。
・Instagram:フォローしているアカウントや使用しているハッシュタグ
・Facebook:いいねやシェアしている投稿、参加しているグループ
・X:フォローしている人やリツイートする内容
これらはすべて、その人が「何に興味があるのか」を示すシグナル。例えば、地域の自然に関するハッシュタグを使っている人は環境に関心がある可能性が高いですし、特定の料理の投稿をよくいいねする人は食に関する興味が強いと考えられます。
人は自分が共感できる、憧れる、興味を持つコンテンツに自然と反応します。「いいね」を押したり、コメントしたり、フォローしたりする行動は、その人の潜在的な関心の表れなのです。
例えば、業種を問わず反応を得やすい投稿内容としては以下のようなものがあります。
・商品・サービスの写真や動画
・店舗やオフィスの雰囲気
・商品・サービスの活用シーン
・スタッフの日常や仕事風景
・地域の風景や四季の移ろい
これらの投稿に「いいね」やコメントやフォローをしてくれる人たちは、実はすでに潜在層と考えられます。彼らはあなたの会社や提供する価値に何らかの共感や興味を持っていることの表れなのです。
SNSではこのように、直接的な宣伝をしなくても、世界観や価値観を共有することで自然と潜在層が集まってくる環境が整っています。
重要なのは、SNSでの発信は「売る」ことを目的にするのではなく、「共感を生む」「世界観を伝える」ことに重点を置くこと。SNSが持つ「人の関心や価値観を映し出す鏡」としての特性を理解し、その場に合った発信をすることで、自然と潜在層との接点が生まれていきます。
ただし、ここで注意したいのは、興味を持っている段階の人に対して、いきなり売り込みのメッセージを送ることは避けるべきです。例えば、特定のハッシュタグを使った投稿をしている人に「うちの商品はいかがですか?」と直接メッセージを送っても、むしろ反感を買ってしまう可能性が高いのです。まずは関係性を築くことから始めましょう。
ステップ2:有益な情報提供で教育する

興味を持ってくれた人に対して、次は「有益な情報」を提供していきます。これがいわゆる「教育」のプロセスです。
ここでいう「教育」とは、決して上から目線で教え込むことではありません。お客様の悩みや疑問に答え、より深く商品やサービスの価値を理解してもらうプロセスのことです。
この「教育」のための効果的なツールとして主流なのが、メールマガジンや公式LINEです。2000年代から2010年代はホームページやSNSから集めた見込み客をメルマガへ誘導し、情報提供を通じて信頼関係を築くという手法が盛んでした。その後、LINE公式アカウントの台頭により、よりパーソナルなコミュニケーションが可能に。2025年の調査では、マーケティング活動でLINE公式アカウントを利用している企業は64.4%に達し、最も多く利用されているSNSとなっています。
どのツールを使うにせよ、重要なのは有益な情報を継続的に提供することです。例えば、業種を問わず有効な情報発信には、
・商品・サービスの選び方や活用法のアドバイス
・メンテナンスや長く活用するためのコツ
・商品・サービスにまつわるストーリー(開発背景や想い)
・地域の特性と商品・サービスとの関わり
・お客様の声や成功事例
こういった情報を、ブログやメールマガジン、LINE公式アカウントなどを通じて定期的に発信します。
地方企業の強みは、地域に根ざした独自の情報を持っていること。全国チェーンにはできない、その土地ならではの視点や知識が、大きな差別化ポイントになります。
例えば、「この地域の気候や環境に適した選び方」「地元の行事や習慣に合わせた活用法」など、地域密着だからこそ提供できる情報はとても価値があります。
ステップ3:適切なタイミングで案内する

信頼関係を築いてきたら、最後は適切なタイミングでお客様を行動へと導きます。
ここで大切なのは「タイミング」です。いきなり売り込むのではなく、お客様が「そろそろ欲しいな」と思い始めるタイミングを見計らうこと。
例えば:
・季節の変わり目➛「冬に向けた準備はお済みですか?」
・イベント前➛「母の日のプレゼントにぴったりの一品」
・限定商品の入荷➛「お問い合わせの多かった〇〇が入荷しました」
・特別な機会➛「おかげさまで創業10周年。感謝の気持ちを込めて…」
こういったタイミングで案内することで、「ちょうど欲しいと思っていた」という反応が得られやすくなります。
地方企業の場合、こうした案内はより個人的で温かみのあるアプローチが可能です。例えば「この前ご相談いただいた件について、新しい選択肢が増えましたよ」といった、一人ひとりの関心に合わせた案内ができるのは、地域密着型企業の大きな強みです。
地方企業だからこそできる潜在層アプローチ

ここからは、地方企業ならではの強みを活かした潜在層アプローチの実践方法をお伝えします。
Webマーケティング市場は、特に都市部では同じような手法を多くの人が実践するようになり、飽和状態になっています。2010年代後半からは、単に「SNSから集めてメルマガやLINEで教育して商品を案内する」という基本的な流れだけでは、なかなか成果が出にくくなってきました。
地方では市場はまだ比較的余裕がある状況ですが、業種によっては大手チェーンや全国展開企業との競争が激しいケースもあります。例えば、飲食や小売、美容など消費者向けビジネスでは、都市部の先進的なマーケティング手法が地方にも波及してきています。
そんな中、持続的に成果を出すためのカギとなるのが「USP(Unique Selling Proposition:独自の価値提案)」です。市場に似たようなプレイヤーが増えている中で目立つためには、「他とは違う」と思ってもらえる独自性が必要なのです。
そして、地方企業にはまさにこの「USP」となりうる独自の強みがあります。それを活かした潜在層アプローチを見ていきましょう。
強み1:顔の見える関係性を活かす
地方企業の最大の強みは「顔の見える関係性」です。大手企業にはなかなかできない、人と人とのつながりを活かしましょう。
例えば…
・スタッフの人となりが伝わる投稿(趣味や日常、仕事への想いなど)
・商品やサービスができるまでの裏側(製造過程や仕入れ秘話など)
・お客様との何気ない会話から生まれるストーリー
例えば、「今日ご来店・ご相談いただいたお客様が、こんな素敵な活用法を教えてくれました」といった投稿が、温かみのある関係性を伝えます。
強み2:地域に根ざした独自のコンテンツ
全国どこでも同じ情報ではなく、その地域ならではの視点や情報が、差別化ポイントになります。
例えば…
・地域の歴史や文化と商品を結びつけた話
・地元の季節行事に合わせた商品提案
・地域の気候や環境に適した使い方のアドバイス
例えば、「この地域の気候を考慮した活用法」「地元の行事に合わせた提案」といったコンテンツは、大手にはなかなか真似できない独自の価値を持ちます。
強み3:小回りの利く対応
大手企業に比べて意思決定が速く、状況に合わせた柔軟な対応ができるのも地方企業の強みです。
例えば…
・お客様からのリクエストにすぐ応える
・地域のタイムリーな話題に合わせた情報発信
・急な天候変化など、地域の状況に対応した提案
例えば、「お客様から〇〇についてのご要望をいただき、すぐに対応しました」といった機動力ある対応は、地方企業だからこそできることです。
限られた資源で効果的に実践するコツ

「理想はわかるけど、人手も時間も足りない…」
そんな声が聞こえてきそうですね。でも大丈夫。限られた資源でも効果的に実践するコツがあります。
時間の使い方を工夫する
すべてを一度に始めるのではなく、優先順位をつけて取り組みましょう。
例えば…
1. まずはSNSの定期投稿から(週1〜2回でも発信を習慣化しましょう)
2. 次にメールやLINEでの情報発信(月1〜2回から始める)
3. 余裕ができたらブログやオウンドメディアの充実
無料・低コストで始められるツールの活用
予算が限られていても、これらのツールなら無料または低コストで始められます。
・各種SNS(無料)(Instagram、Facebook、YouTube、TikTok)
・LINE公式アカウント(無料プランあり)➛料金プラン
・Googleフォーム(お客様のメールアドレス収集に便利、無料)
・Canva(画像編集が簡単にできる、無料プランあり)
継続するための仕組みづくり
発信は、続けることが何よりも大切です。そのための工夫を。
例えば…
・カレンダーに投稿予定日を記入しておく
・投稿内容のアイデアリストを常に更新する
・写真や素材を日頃からストックしておく
・できるだけ業務の流れの中で写真撮影などを行う
大切なのは「完璧を目指さない」こと。プロのような美しい写真や文章でなくても、誠実さと継続性があれば、必ず共感の輪は広がっていきます。
今は、スマホでもきれいな映像が撮影でき、簡単に編集もできます。マイクや三脚も低価格で購入できるので、まずは気軽にやってみましょう。
地方企業:潜在層アプローチの具体例

最後に、地方企業が実際に行っている潜在層アプローチの具体例をいくつかご紹介します。
1.ストーリーテリング型
地域の歴史や文化、人々の暮らしを物語として紹介し、感情的なつながりを築くアプローチ。例えば、地域の特色ある商品やサービスを扱う企業が、その背景にある想いや過程を定期的に発信することで、単なる「商品・サービス」ではなく「ストーリー」を伝える。
2. 体験提供型
実際に商品やサービスを体験してもらうことで、購入へのハードルを下げるアプローチ。例えば、地方企業が定期的な体験会やセミナーを開催し、SNSで様子を発信しながら次回の参加者を募る。
3. 参加型プロモーション
お客様自身に参加してもらい、主体的な関与を促すアプローチ。例えば、地域の企業がお客様の活用事例投稿を募集し、優れた投稿を店舗やSNSで紹介する。
4. 季節・行事連動型
地域の季節や行事に合わせた情報発信を行うアプローチ。例えば、地域の企業が「お盆準備特集」「運動会シーズンのおすすめ」など、地域の生活リズムに寄り添った情報を発信。
これらの例に共通するのは「売る」ことよりも「価値を伝える」ことに重点を置いている点です。直接的な販売促進ではなく、お客様の生活や価値観に寄り添った情報提供が、結果的に信頼と関心を高め、購入行動につながっていくのです。
やってみよう!:レベル4クエスト

では、潜在層アプローチの第一歩を踏み出すための課題に挑戦してみましょう!
1. お客様の「なぜ?」を3つ書き出す
「なぜすぐに購入に至らないのか」「どんな情報があれば行動に移せるのか」「何を不安に思っているのか」…お客様の心理を想像して書き出してみましょう。
2. あなたの会社・お店ならではの「強み」を3つ挙げる
地域密着だからこそ提供できる価値は何でしょうか?大手には真似できない独自の強みを考えて、書き出してみましょう。
3. 今週できる情報発信を1つ計画する
SNS投稿でも、店頭POPでも、LINEメッセージでも構いません。潜在層の心に響く情報発信を1つ計画し、実行してみましょう。
レベルアップ!

おめでとうございます! あなたは「潜在層アプローチの基本」を習得しました! 難しそうに感じたかもしれませんが、本質は「お客様の心に寄り添う」というシンプルなことですよね。
地方企業だからこそ、お客様一人ひとりの気持ちに寄り添った情報発信ができるはず。あなたの会社の強みを活かした潜在層アプローチで、「興味はあるけどまだ行動しない人」の背中を優しく押してあげましょう。
この知識をもとに、少しずつ実践を重ねていくことで、あなたのビジネスはきっと新たな段階へと進化していきます。次のレベルに向けて、一緒に成長していきましょう!
💡① 潜在層アプローチの3ステップ
・興味を持つ人を集める(SNSの活用)
・有益な情報提供で教育する
・適切なタイミングで案内する
💡② 地方企業だからこそできる強み
・顔の見える関係性を活かす
・地域に根ざした独自のコンテンツ
・小回りの利く柔軟な対応
💡③ 差別化が勝ち残るカギ
・他とは違う独自性を持つ
・地方企業ならではの視点や強みを明確に
・潜在層アプローチ力 +15 【達成】
・コンテンツ企画力 +12 【達成】
・地域特化戦略力 +10 【達成】
次回は「【Lv.5】あなたの会社だけの強みを見つける!USP(独自の価値)の作り方」についてお伝えします。どうぞお楽しみに!
